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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第16章 《巻の弐―花―》
 何しろ生まれたときから育てた乳母だけに、主従の間柄とはいえ、かなり言いたいことを言う。が、その口うるささも遠慮のない物言いもすべては泉水を思うがためのものと知っている。
「いや、別に」
 泉水は気のない返事を返すと、再び庭にボウとした視線を投げた。
 ここは榊原家の屋敷の奥向きの一角、泉水の居室である。春たけなわのこの時季、部屋の障子戸はすべて開け放っている。
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