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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第16章 《巻の弐―花―》
口にするのは容易いけれど、それだけの決意をするのには相当の覚悟を必要としたはずだ。人は誰しも自分の血を受け継ぐ我が子に跡を継がせたいものだ。泰雅だとて、その想いが皆無とはいえまい。
それなのに、たとえ我が子でなくとも良い、分家の者に跡を譲るのだと言った。つまり、我が子に榊原家の家督を譲るよりも、泉水ただ一人を妻として守るという意思を貫くというのだ。これが、かつて稀代の女狂い、遊び人と陰口を叩かれた男の科白だった。