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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第17章 《巻の参―幻(げん)花(か)―》
今宵は月夜なのだな、と、ぼんやりと考える。だが、細い女人の眉のような月はおぼろに滲んでいる。それが、どこか、この風景を現ならぬ、ひどく現実感のないものに見せていた。
一陣の風が吹き抜ける。ゴォーと唸りを上げながら吹き抜けてゆく風に巻き上げられ、薄紅色の花が散る、散る。泉水は降り注ぐ花びらを浴びて、その場に立っていた。そして、ハッと気付く。いつしか花びらがまた、雪に変化(へんげ)していた。