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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第17章 《巻の参―幻(げん)花(か)―》
そう、あれは祐次郎と共に見た椿の色、祐次郎が死んだ日の朝に見た花の色、遠い日、幼い頃の記憶。
刹那、泉水は息を呑んだ。不吉なほど艶やかに咲き誇る緋桜の下にひそやかに立つ人は、女(おみな)ではなく、夜叉の面をつけていた。ギョロリとした眼(まなこ)を大きく見開き、カッと口を開き、牙を剥き出しにした般若は、人の憤怒の形相を表現しているという。大人しやかで、たおやかな女性を表した女(おみな)の変化(へんげ)したもの、その怒りの表情が般若である。
刹那、泉水は息を呑んだ。不吉なほど艶やかに咲き誇る緋桜の下にひそやかに立つ人は、女(おみな)ではなく、夜叉の面をつけていた。ギョロリとした眼(まなこ)を大きく見開き、カッと口を開き、牙を剥き出しにした般若は、人の憤怒の形相を表現しているという。大人しやかで、たおやかな女性を表した女(おみな)の変化(へんげ)したもの、その怒りの表情が般若である。