この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第2章 巻の壱ー槇野のお転婆姫ー

風邪をこじらせたのが因(もと)で、寝込むことすらなく容態が急変して亡くなってしまったのだと聞かされた。婚約した身でありながら、三年の婚約期間の間、顔を合わせたのはほんの数度にすぎなかった。それでも、泉水の想い出の中に祐次郎はちゃんと生きている。
祐次郎が亡くなった時、三つ下の泉水は十一歳であった。あれは寒い寒い日のことだった、部屋の前の庭に植わった椿が真っ赤に色づいていて―、その鮮やかな紅はまるで死人(しびと)の血を思わせるほどに艶(つや)やかで美しかった。
祐次郎が亡くなった時、三つ下の泉水は十一歳であった。あれは寒い寒い日のことだった、部屋の前の庭に植わった椿が真っ赤に色づいていて―、その鮮やかな紅はまるで死人(しびと)の血を思わせるほどに艶(つや)やかで美しかった。

