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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第17章 《巻の参―幻(げん)花(か)―》
それにしても、この静かに泉水を見下ろす阿弥陀如来と、昨夜見たあの般若の男とのこの表情の違いはどうだろう。どこまでも静謐さを身に纏い、慈しみに溢れたまなざしを向ける阿弥陀と片や憤怒の形相で、対する者すべてに荒れ狂う怒りを発散させようとする般若。
全く対極にあるようでいて、しかしながら、泉水は、そのどちらもが内面に同じものを秘めているように見えてならなかった。それは、哀しみ―、この現し世に生きるすべての生きものに向けられた哀しみであった。
全く対極にあるようでいて、しかしながら、泉水は、そのどちらもが内面に同じものを秘めているように見えてならなかった。それは、哀しみ―、この現し世に生きるすべての生きものに向けられた哀しみであった。