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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第17章 《巻の参―幻(げん)花(か)―》
泉水が勢い込んで問うと、徳円は艶(あで)やかに微笑んだ。
「生きていました。その家の奥方が双子を生み落とした折、赤児を取り上げた産婆が殺されるはずの赤子を哀れみ、ひそかに連れ帰って育てたのです。むろん、老いた産婆は、その家の主(あるじ)夫婦には赤児は確かに殺したと告げ、自分は一人遠く離れた場所に移り住み、赤児はそこで育ちました」
「良かった―」
ホッとする表情の泉水に、徳円は口許を歪めた。