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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第17章 《巻の参―幻(げん)花(か)―》
「あなたの兄上は、ご立派な、お優しい方でした。そのようなことをおっしゃるあなたをご覧になれば、哀しまれます」
徳円の瞳が辛辣な光を乗せている。
「煩いッ、あなたに何が判る。私がこの世から消されたのと引きかえに、兄はすべてを手に入れた。兄の得た幸せは、私が生命を奪われたその代償として兄に与えられたもの。―兄さえいなければ、私は自らの存在を抹消されることもなく、あの家の、堀田の家の倅としてつつがなく成長していたはずだ。
徳円の瞳が辛辣な光を乗せている。
「煩いッ、あなたに何が判る。私がこの世から消されたのと引きかえに、兄はすべてを手に入れた。兄の得た幸せは、私が生命を奪われたその代償として兄に与えられたもの。―兄さえいなければ、私は自らの存在を抹消されることもなく、あの家の、堀田の家の倅としてつつがなく成長していたはずだ。