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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第17章 《巻の参―幻(げん)花(か)―》
兄さえいなければ、祐次郎さえいなければと、幾度思ったことか。兄の手に入るはずだったものは、本来私のものでもあるのだ。父母の愛情も、そして、あなたも」
その時、突如として遠くで雷鳴が轟いた。
先刻までの冴え渡った月夜が嘘のように、ゴロゴロと獣の咆哮にも似た不気味な唸り声を低く上げている。
泉水は思わず固まってしまった。お転婆姫と呼ばれ始めたやんちゃな昔から、たった一つ苦手なのが雷なのだ。