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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第17章 《巻の参―幻(げん)花(か)―》
これは後で知ったことだが、泉水が徳円に軟禁されていたのは随明寺の阿弥陀堂であった。徳円から解放されて、あの堂を出て夢中で走っている中に、ふと周囲の景色が見憶えのあるものだと気付いたのである。
しかし、絵馬堂ならばともかく、阿弥陀堂の方までは滅多と脚をのばさないため、迂闊にも気付かなかったらしい。
ずぶ濡れになって戻ってきた泉水を見て、もちろん、時橋は泣いた。泰雅は、ただ黙って抱きしめてくれた。