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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第19章 《其の壱―嵐―》
刹那、泉水が考えたのは将軍の御身に急変があったのかということだったのだが、その想像は見事なまでに裏切られた。
「いえ、殿が」
あまりに慌てたためか、敷居際でまろびそうになり、脇坂は急いで体勢を立て直した。常に冷静沈着をもって知られる脇坂にしては極めて珍しいことであった。
「なに、殿がどうかされたのか!?」
泉水は眼を見開いた。泰雅の身に何かあったとでもいうのだろうか。暁方に感じた不安が急にせり上がってくる。