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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第20章 《巻の弐―予期せぬ客人―》
老中たちは京都からわざわざ名医と謳われる奥井(おくい)道(どう)安(あん)を呼び寄せ、将軍の治療に当たらせた。奥井道安は四十二、長年、長崎で最新の阿蘭陀(オランダ)医術を学び、帰京して以後は町医者として市井の人々のために尽くしてきた。知る人ぞ知る優秀な外科医である。老中からの使者に最初、道安は良い返事をしなかったため、幕府の威光をちらつかせ脅したところ、道安は淡々とした表情で言ったという。