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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第20章 《巻の弐―予期せぬ客人―》
―わしが江戸にゆくのは何も相手が公方さまゆえではない。わしにとっては患者の身分なぞ、どうでも良きことなのだ。たとえ相手が地獄の閻魔であろうが、病であると聞けば、地獄の底まで診察に出かけゆく。わしは、そういう主義でな、されば、公方さまであろうとなかろうと、病の方がおられるとあらば、江戸へも参ろう。さりながら、その病人がわしの手に負えるかどうかは判らぬぞ。医者は神でも仏でもないからな、あくまでも病人が自ら健康になろうとするのを脇から手助けするだけよ。