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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第16章 第四話【花笑み】 《其の弐》
 朱塗りの地に控えめに白い水仙が描かれた蒔絵の櫛。まだ孝太郎と名乗っていた小間物売りに身をやつしていた頃、彼が美空に贈った櫛だ。
 思えば、この櫛が二人を結びつけたのである。初めて出逢った日、自分が落としてしまった櫛を買おうとした美空に、そんなに気に入ったのなら、ただでやろうと言った孝太郎。結局、美空は、そのときは櫛を貰わず、今度孝太郎に逢うことがあれば買い取ろうと、いつも銭を持ち歩いていた。
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