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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第2章 《其の壱》
男らしい潔い引き際は何より、誠志郎の気性をよく表していた。
それゆえ、この後、美空は表の腰高障子に〝仕立物致します〟と覚束ない文字で書いた札をぶら下げることになった。
美空は平仮名の読み書きなら一通りはできるけれど、漢字混じりの文となると、もうお手上げだ。読み書きは同じ長屋に住む浪人が寺子屋のようなものを開いているので、そこで習い憶えた。父弥助は〝女に学なんぞ必要ねぇ〟とにべもなく、美空が寺子屋に通うのにも良い顔はしなかった。