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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第12章 【細氷~さいひょう~】《其の壱》
美空は深閑とした部屋の中で、しばし惚けたように座していた。ふと視線を動かすと、庭先の紫陽花が露を宿し、這い寄る夕闇の中でひっそりと花開いていた。しっとりと露をを帯びた色とりどの花たちは、煌めく七宝焼き細工のようにも見える。
重なり合った鈍色の雲と雲の間から、ひとすじの光が差していた。灰色の空がかすかに茜色に染まっていることから、明日はとりあえずは晴れるのだろうと、ぼんやりとした意識で考える。