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そのキスの代償は……
第6章 その逢瀬
「早くこうしたかった…」


両方の掌がゆっくりと身にまとうものを肩から外し、

長い髪を右肩に流しながら取り去られる。

生地が擦れながら背を滑っていく感覚が、

両掌で撫でるように愛撫されたそれに似ているような気がして…

一気に以前与えられた時の快感がどこからか蘇ってくる。

下腹部に締め付けられるような感覚がして…

蜜壺の口からだらしなく雫を垂らし始める躰。


でも、私の頭はその先の悦楽ではなく全く違うことがよぎっていた。


この前は、どうして来ないのか?

弄ばれているのだろうか…

今夜みたいに暗闇の中一人ベッドの端に腰掛けて悩んだ。

あの人に愛情はないのかもしれないけど、

でも躰への固着くらいは持ってくれているんじゃないのかと

思っていたのに…

真夜中を過ぎても誰も現れることのないドアに

神経を集中させ続けるのが馬鹿らしくなって、

携帯に手を伸ばした…


あ…電源が切れてる。

娘たちに何かあったらいけないから、急いで電源を入れる。

こんな時にまでそんなことを気にするなんて…

嘲笑しながら見つめる画面が揺れて…

メールの着信表示にあの人の名前を見て、心臓が飛び跳ねる。
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