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そのキスの代償は……
第6章 その逢瀬
目が覚めたら…

やっぱりあの人はいなかった。


親密で濃厚な交わりの後、暗闇の冷めきった部屋のベッドに独りきり。

この身にさっき起こった快感は幻だったのか…


「ジャラ」

その時、足元から聞き覚えのある不快な音。

記憶の端にぐっさりと突き立てられた棘。

その心に受けた痛みを思い出し、眉根を寄せて奥歯を噛み締めた。

込み上げる苦いものをぐっと飲み下す。


あの人の言いなりになる事は奴隷になりさがる事なのだろうか?

違う。あくまでも最後は自分で選んだ…

私は自らが望んでここにいるのだから。


それなのに、いつもこんなヤリ棄てられたように置き去りにされて…

それでもあの人に執着してしまう自分。


私はこんなに従順な躰に躾けられてしまったのだろうか?

どうして、そこまで溺れてしまっているのだろうか?

何をされても言い返すことすらできないなんて…

もう一度奥歯を噛んだ。


瞼を閉じると、あの人の肌の感触が蘇ってくる。

でもそれは、もう幻でしかなくって…

私は躰の下のほうに手を伸ばして…

左足首に付けられたその戒めを自ら断ち切った。


こんなものなくても、私はあなたのモノだから…

あなたの躰に、もう溺れて堕ちきってしまってるから…

でも、それは私の意思。

私をこれ以上貶めないで…

傷つけないで…

辱めないで…
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