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そのキスの代償は……
第6章 その逢瀬
「相良君おはよう」

密室の逢瀬は終わり、いつものように週末が明けた月曜日。

あの人のデスクにコーヒーを持って行くと、

こちらに視線を向けないままあいさつしながら

私に小さなメモの付いた紙束を差し出した。


その紙を受け取り、トレーを左脇に抱えてその場でメモに目を落とす。


『10時に予定通り来客。急遽+2人。

会議室にコーヒー5つ。資料を頼む』


今日は、打ち合わせのため客先が来社するとは聞いていた。

人数が増えたから飲み物も増えるのだろうが、

おそらくこの資料を5部、今からすぐ用意しろということか。

分厚い紙をぺらぺらとめくった。

さすが几帳面なあの人らしい…


「わかりました。左綴じ1か所留めでいいですか?」

「ああ、それで頼む」


私はすぐさま給湯室に戻り、紙束を置いて

まだ出勤していない同僚のカップをトレーの上に並べ始めた。

その中にインスタントの粉をスプーンで入れる。

それから横にスプーンを3本置く。

こうしておけば、私がいないのがわかれば

自分の飲み物は自分で用意するのが暗黙のルールだから大丈夫だろう…


「行ってきま~す」

ボードの自分の名前ところに『印刷室』と書き込み

急いで資料を持ち部屋を出た。

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