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そのキスの代償は……
第1章 プロローグ
気怠い躰を横たえたまま、瞼だけそっと押し上げる。

部屋は暗かったが、カーテンの隙間から一筋の光が見える…

夜が明けたのだろうか?


男の一人暮らしには必要ない大きなベッド…

ここで自ら望んで脚を開き、生け贄になった女が幾人

その気の狂うような快楽にむせび啼いたのだろうか?

久々の快感を手にした翌日、

私はあの人の部屋のベッドの上で一人目覚めた。


あれからも、あの人は…

とにかくすごかった。

女の躰を奥深くまで知り尽くした掌に、ただひたすらに翻弄され続けた。


所々記憶がなく、所々初めて知る感覚に戸惑い、感じた…

底の分からない快楽の泥沼にはまり込んで堕ちていく。

それは昨夜のことのはずなのに、

まだその泥に手足を取られてしまっていて動けない…


シーツからほのかに香る、煙草とフレグランスの混じった香りを

思いっきり吸い込み、まどろむ心地よさの中、

叶った情事の濡れ事を反芻して、つかの間の時間に浸っていた。


長い間隔てていたモノを再び受け入れた躰は、

最初少しの痛みを感じたもののその突きぬけるような快感を

間違いなく覚えていた…


ああ、これが欲しかったの。やっぱり私は聖女じゃない。

やっぱり私はこれなしでは生きていけない…

その朝、私が後悔したのは、あの人に抱かれたことではなく、

その快楽に再び目覚めてしまったことだった…
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