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そのキスの代償は……
第7章 その日
食事を終えると、どこかで見ているのだろうか?

ギャルソンが静かに近づいてきて皿を下げようとする。


「飲み物をお持ちしてもよろしいでしょうか?」

「ああ…」

あの人は柔らかい表情のままギャルソンに向かって相槌をした。

こんなにも穏やかな姿を会社では見たことがない…

これがこの人の素の姿なのだろうか?


「今夜はありがとうございました。食事、とても美味しかったです…」

「よかった。おそらくこんな経験はないだろう?

ああ、嫌味とかじゃないんだ。

俺も長い間こんな世界なんて知らなかったからな」

「はい…」

正直に答える。

「たまにはいいもんだろう?

これが毎日になると、それはそれで…

まあ、誰と食べるか相手にもよるんだがな」

苦笑いを浮かべる。誰のことを言っているのだろう?

「そうなんですか?」

「ああ。今夜は久々に楽しかった…

相良、ありがとう」


お礼を言われることに違和感を感じてしまう…

そんな時、トレーに乗せられた飲み物が運ばれてきた。

「失礼します…」

ギャルソンは綺麗な所作で、それぞれの目の前でカップを置き、

ポットから紅茶とコーヒーが注がれた。

湯気を挟んであの人と見つめあう…。


淡い気持ちに胸がジワリとあたたかくなった。
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