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そのキスの代償は……
第7章 その日
カップを手に取り、肘をついて掌で包み込む。

その温もりを頬で感じてから、ゆっくりと唇を寄せ一口含んでみる。

口の中いっぱいに広がる味に…

ホッとした。


視線の先には、あの人の指先がコーヒーのスプーンを弄んでいる。

その顔が上がり、細めた瞳がこちらを舐めるように見る。

目で犯される快感を…

この躰に教え込んだのはこの人だ。

その目から逃げるようにカップをおろし、瞳を閉じると、

瞼の裏にあの瞳で私の肌を貪るあの人がみえた。


何度も視線をこちらに向けて瞳まで侵しながら、肌を侵食し続ける。

幻想なのに、素直な躰は期待も含んだ蜜を垂らして反応し始める…


落ち着かない気分のままゆっくり目を開け、

カップをあおりながらなんとか最後まで飲み物を飲み下すが、

意識は完全に下半身に囚われていた。


それから…

あの人が目で合図をし、先に立ち上がってこちらに回ってきて、

私に手を差し伸べた。もう帰るのだろうか?


「それ、よく似合ってる。ほんとうに綺麗だ…」

掌に指先を絡めてから私を引きよせて立ち上がらせ、

射抜くように見つめながら降ってくる賞賛の言葉。

「…」

私はとうとう、何も言えなくなってしまった。
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