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そのキスの代償は……
第1章 プロローグ
いつもの会社の飲み会の帰り。

今夜もいつものメンバーでタクシーに乗り込む。

4人で乗った私たちは、1人、また1人と降りて行き…

必然的に私とあの人が残った。

これもいつもの事だった…


街灯の少ない田舎道。

壊れそうなほど暴れる心臓をなだめながら、

助手席に乗ったあの人とは反対の車窓を見ていた…


景色が流れ、もうじきあの人の家に着く…

そう思っているとあの人は運転手に声をかけ、

マンションの駐車場にタクシーを停めさせた。


「じゃ…」

後部座席の私の方に軽く挨拶をして、とうとうあの人もタクシーを降りた…

降りてしまった…


ドアが自動で閉まり

「どちらに向かったらいいですか?」

後部座席に振り向く運転手の丁寧な言葉に、私は黙り込む。


早く…

言わなきゃ…


このままでいつものようにしていたって、何も変わりはしない。

何日も、何か月もかけて覚悟を決めたはずの私は、

これからすることに躊躇して動けなくなっている自分を…

嘲笑いそうになった。


「お客様?どちらへ?」

運転手は私に聞こえていないと思ったのか、さっきより一際大きな声で

もう一度行先を問い直した。
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