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そのキスの代償は……
第11章 その朝
ポケットに戻すことができないまま、ただじっと突っ立って握り締めた。

バクバクと壊れそうなほどの鼓動が耳の中で響き渡る。

見たいという欲望の方が理性を押しのけ…

意を決してメールを開いた。


それなのに、どうして???

[…]

画面はただの真っ白。文字が何も表示されない…

思わず携帯が壊れたのか、不安になり焦って他のメールを開けたら、

普通だった。


これって何?何を言いたいの?

何かの作戦なのだろうか?

こんな思わせぶりなことをするなんて…

それとも単に手が当たっただけ?

何もわからないまま、真っ白な画面にため息が零れた。

ただ疲労感だけが溜まっていく。


以前は変わりないことに…

変わっていないような素振りをすることに…

一生懸命だった。

周りが何も気が付かずに、変わらないことが救いだった。

でも今は、自分だけがこんなに変わってしまったのに、

周りが何も変わらないことが…

その事実がこんなに重たいなんて…

あの頃の私は思わなかっただろう。


これ以上勘ぐっても仕方がない。

私は携帯をポケットに戻し、給湯室を出てデスクに戻った…

私がチェアーに座るときに、入り口からあの人が戻ってきたのが見えた。

ちらっとだけそちらに視線を向けたがすぐに画面に戻り、

スリープしたパソコンに再び意識を集中した。

『仕事しなきゃ…』
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