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そのキスの代償は……
第11章 その朝
その夜は、突然単身赴任先からメール一つで呼び戻され、

従うしかなく車を飛ばして高速に乗り、久々家に戻ったのだが…

いつもと違い「特に用事はないが久々家族と過ごすのも悪くないでしょ?」

とだけ言われ、夜も遅かったので子どもに会うこともできないまま、

仕方がなく自分の寝室で休んでいた。


夜中が過ぎたのだろうか?人肌を感じ目を覚まして

隣の聡美と目が合って…

反射的に躰がビクつく。

首までかぶっているかけものをめくると…

白いリネンに赤の縄が浮かび上がる。


佐伯がしたのだろうか?自分でできるはずもなく…

佐伯に間違いない。それも聡美が命じたのだろう。

彼女は深紅の縄化粧を施された姿態で俺のベッドに滑り込んできていた。


「ねぇ~、腕はあなたが縛ってぇ…」

寝ぼけ眼の俺に向かって、真っ赤な組紐を差し出して不気味に微笑む。


この女、普段は清楚なブランドスーツを身に纏って冷やかに

男を顎で使って従わせるSのくせに、一たび俺の前で服を脱ぎ捨て

ベッドに横たわると、とたん情熱的なMに豹変する。


今度は何を覚えてきたんだ?

こうも手を変え品を変え…

その趣向を聡美は悦んでいるのだろうが…

それが俺には…

吐き気がするほどキモチ悪かった。
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