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そのキスの代償は……
第11章 その朝
「あっ、あっ、あっ、あっ…

あぁっん。あなたぁ~、いいぃ~」

征服するように組み敷かれているのは口をだらしなく開け涎を垂らした

深紅の縄化粧をした妖艶な女…

ここまでも吐き気を堪えながら、この女を昂ぶらせ、

さっさと彼女の望む条件で逝かせるためだけに、

躰中に唇を這わせ、その襞に、裂け目に愛撫し続けた。

その度に鼻に突く甘ったるい香水で…

込み上げる毒をもう何度飲み下しただろう?


結婚した当初は、彼女を愛そうと思った時も…

わずかだがあった。

お嬢様で処女だったはずの聡美の姿態は、

ただ男のモノを受け入れたことのない未通なだけなのではないかと

思わせるほど、うぶのかけらも持ち合わせていなかった…

挿れること以外は誰かに仕込まれたんじゃないかと憶測するほど、

最初から熟れた娼婦のようで、その膣(なか)は柔らかく、

絡みついてよく濡れた。

それから徐々に露わにされる性癖を知るにつけて…

俺は興ざめしていった。

乱れる聡美の陰に、寡黙な佐伯の姿がちらつくのが…

とにかく嫌だった。


婿養子に入ることによって、取締役という後ろ盾と、

白石というブランドを手に入れ、仕事をするうえでは無敵になり…

順調に出世街道を駆け上っていったが、

どうしても聡美を、かおるの時のように慈しみ愛すことはできなかった…
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