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そのキスの代償は……
第12章 その後の二人
そして週末のある夜、とうとう…

【ホテルの名前と部屋番号】

以前と同じシンプルなメールがあの人から来た。

この前の意味深なメールが何だったのかも結局わからない。

そんな不安な状態の中、それを受けたのは夜も更け自室にこもり

独りテキストを開いているときだった…


ここで…

この壁を乗り越えてしまえば私は違う人間になってしまう。

自分が生きてきた道を、やってきたこと、成し遂げたことのプライドを

粉々に砕かれてしまう…

ただ自由にお互いの欲望を満たしていればいいだけの

関係ではなくなってしまう…


でもあれからあの人を避け続け、意識しないように努力すればするほど、

その姿をチラリとでも見れば以前にもまして胸は高鳴り、

躰は反応してしまう。そんな自分が…

心底嫌だった。


携帯を持つ左手が大きくプルプルと震える。

画面を見た瞬間から溢れ出た涙を止める術はない…

大粒の涙を流しながらゆっくりと天を仰ぎ、

震える手を反対の掌で握り胸に抱きしめた。


暗く閉ざされた視界の先に、裸の私を背後から抱え、

喉元に鋭利で怪しく光るナイフを突きつけながら、

「さあどうする?」と艶やかに微笑むあの人の姿が見える気がした。
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