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そのキスの代償は……
第12章 その後の二人
年下からかけられる優しい言葉に…

涙が込み上げそうになる。


それを受ける資格なんてない自分…

もう何度も仕事を含めてあの人との全ての繋がりを断つことも考えた。

何度考えても、私にとって他にできる仕事なんてあるはずもなく…

娘たちを何の事情も話せないようなことで突然転校させることも…

無理なことだとわかった時、

結局は私が狂いそうな感情を治めながら生きれば

その他のすべてが丸く収まることを悟った。


顔を見ない日なんてないなら、もう会わないなんてできるわけもないと…

だから今夜思い切って堕ちてしまおうと決めた。


意識を目の前の優しいナイトに戻すと、

鼻の下に白いひげを付け丸い目で私を覗き込んでいるのに気が付いて…

可笑しくなった。


「湊君!!ひげ、ひげ」

私は込み上げた涙を笑いながら流し、鼻の下を伸ばし人差し指でなぞると、

意味が分かったのか慌てて口元を拭う。

そして、少し恥ずかしそうに…

頬を染め笑った。

そのうぶな姿をかわいいと思いながら…

自分がいかに年を重ねたのかを思い知らされる。


こんな何気ないやり取りに、心が穏やかになった。

これから何が起きても…

狂うような感情に翻弄されることになっても…

私は生き延びてみせる。


そんな気持ちを奥底に抱え、それからしばらくの間クスクスと笑い続けた…
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