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そのキスの代償は……
第12章 その後の二人
あの人は部屋の奥で待っていると疑いもしなかったのに…

それなのに…

揺れる視界のすぐ先に突っ立っていた。


どうして?

そう思いながら部屋に入り後ろ手でドアを閉めた瞬間、

より鋭くなった視線に絡め取られ…

驚く間もなくドアに背中を押し付けられて強引に口を塞がれた。


色々なことがあった後だからなのか…

最初口づけられた時のあの恍惚感が蘇った。

歯列を舌先でなぞりながら犯されているのは口腔内ではなく、

この醜い心の奥底。

嬲られながら何もかもドロドロに溶かされて、ただ溺れていく…


朦朧として膝が崩れるのは、一気に流し込んだアルコールのせいか、

それともこの人がくれる悦楽の虜にだからなのか…

自分の意思とは裏腹に背中のドアの感触を感じながら

ゆっくりゆっくりと重心が下がり始める。


その時、口が自由になったと思ったら今度は強く抱き竦められる。

なんなのいったい?


再会を待ちわびた恋人のように拘束されながら…

最初に一瞬見えたあの人の顔は今どんなふうなのだろうか?

なんでこんなことをするのだろうか?

浮かぶのはいつもと違う事への違和感と疑問ばかり…

それでも躰は確実に昂ぶっていて、目指す先へと確実に駆け上っている。

それがあの人の手によるものだとわかっているからこそ…
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