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そのキスの代償は……
第12章 その後の二人
抱擁が解かれ、熱が少しだけ遠ざかったが、

私をじっと見つめる瞳には獰猛な炎が灯りゆらゆらと揺れていた。

負けじと睨むように対峙して見つめ返してみたが…

執念に似た強い光を宿す気迫に勝てるはずもない。


この人のこういうところに魅かれてしまうのだろうか?

これほどまでに私に執着し、欲しがってくれる人は今までいなかった。

どこまでいっても、孤独と隣り合わせだった私の…

女としての寂しさに付け込まれてしまった。


「異動するまででいい…

それまででいいから、もう少しだけ俺の側にいてくれ」

それは懇願に似た命令…

でなければあんなものにサインなんてさせないはず。

それでも何もかも受け入れるつもりだからこそ背中にある…

この扉を今夜超えてきた。

覚悟を決め黙ったまま、ただ首を縦に一度だけ動かした。


目の前で右眉が上がるあの艶やかな表情を久々に見た気がした…

「今夜も狂うほどイカせてやるよ」

抱き上げてから耳たぶに前歯を立て、べろっと嬲る。

「ひゃんっ」

逃げることを諦めた躰は、どんな些細な刺激にもただ従順に応えてしまう。

「さあ、淫欲の世界へ…」

それから部屋の奥に向かってしっかりとした足取りで歩き始めた。
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