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そのキスの代償は……
第13章 その変化
研修のあの日の後。

そういう契約が成立してから、

あの人は目覚めた私の横に眠っていることが多かった。


穏やかな寝顔。

夜、その瞳に囚われ喰らい尽くす野獣と化すあの人との…

つかの間の穏やかな時間。

一緒に目覚めた時は、嫌味を言うわけではなく再び私を抱くわけでもなく、

ただ私の身体を丁寧に慈しむように洗い、一緒にシャワーを浴びるだけ…

そしてぽつぽつ私の話す言葉に相槌をしてくれた。


目が覚めた後の様子は、夜のあの人とは違う。

仕事をしているときのような、物静かで情熱を秘めたあの人だった。


躰を拭いてもらい、バスルームから出て身支度をする。

どうしても女の方が時間がかかってしまう。


その日、早く身支度を終えたあの人は荷物を持ち、

テーブルの上に白い綺麗な模様の入った封筒を置いて

こっちの様子をじっと見つめてから…

静かに部屋を出ていった。


私はテーブルの物から視線を逸らし、静かに部屋の窓に近づく。

そこは眺めの良い部屋だった。

「夜しかいないから何階でもいっしょなのにね…」


あの街の喧騒の中に消えるのだろう…

そこに一度混じってしまえばもう私の物ではない。

もう二度とあの人と二人きりで喧噪に混じることはないのだから…
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