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そのキスの代償は……
第14章 そのひと時
夜が来ると、時たまそうやって悲観してしまうが…

基本考えないと決めているので、夜が明けてしまえば、

目の前の忙しさに、ただなすべきことをこなすだけでやっとだった。

家事に子どもの事に仕事。それだけあれば手一杯で毎日が明けては暮れる。


あの人との逢瀬は、そんな忙殺された日常を忘れさせてくれる…

私にとってはひと時の癒しのようで…

カンフル剤のようなものだろうか?


「愛人契約」なんて大それたものにサインをした当初は、

悲観的になってしまうこともあったが、人間はどんなことにも順応する。


時間が経つにつれて、私の罪悪感は徐々に薄まっていった。

いいじゃない?

お金はあってもそう困らない。

もう思い悩まなくったっていい!!

あの人の言うとおりお金をもらう以外…

ほとんど変わらない。

奥さんだって、それでいいと。


あの人に抱かれているという事実は変わっていない。

絡まりついた自分の感情をほどこうともがくのをやめた。

そうしたらずいぶんと…

楽になった。

私は何かが、壊れているのかもしれない。

壊れてしまったのかもしれない。

でももうそんなことどうでもいいじゃない。


あの人は私をあの人なりに大切にしてくれる。

私も必要な男の躰とお金を手にしている。


こんな関係に瞬間でもそれ以上を望んだ私が悪かったんだ。
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