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そのキスの代償は……
第14章 そのひと時
飲み会の後のいつもの逢瀬。

昨夜も激しかった…

堕ちるようにいつの間にか眠りにつき、目覚めた私は手探りで…

あの人を探した。

素肌に纏ったシーツの感触。あの人特有の香り。

その全てが、私にとって心地いいものだった。


目覚めた時、あの人がいることにも…

ずいぶんと慣れた。

いなかったときのあの切ない…

でも胸が暖かくなる時間は、それはそれで私には大切だったが、

目の前で見ることを許されたあの人の無防備な姿に、

はにかんでしまう自分。


失くしたものも多かったけど、でも確かに手に入れた物がここにある。

そして、目覚めたあの人は最初こそ黙々と躰を洗い、

時に物静かに相槌を打つだけだったが、次第に変わっていった。


その姿に違わない…

少し皮肉屋で、茶目っ気もあって饒舌。

そして、時に思いやりを見せるいい男だった。


でも私達はお金で契約された関係。

それでしか説明することを許されない間柄。

そうなってから初めて知るあの人の一面。

その優しさにお互いの想いが通っているのではないかと

勘違いすることも度々あったけど…

それでも私はあくまでも「アイジン」を演じ続ける。


そう最後まで…

最後の時まで…


それからもしばらく、揺れながらも穏やかなひとときが続いた…

でもそんな関係が長く続くわけもなく…

その時が近づいていた。
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