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そのキスの代償は……
第15章 エピローグ
春が来た。
温かくなり、花が芽吹いて、何もかもが色づく季節。
でも母親が俺を置き去りにして捨てた春…
カノジョが突然いなくなった春…
あの妻(おんな)と永遠の愛を誓ったのも…
この春だ。
俺にとって春は…
どこまでいっても忌々しい記憶しか残らないモノだった。
この4月、今年こそ転勤になるかと冬から怯えてびくびくしていたが…
運よく内示もなく、彼女のいる支社に残ることができた。
うちの課には30歳の男子社員が転勤してきた。
今までの慣例で、彼女がその社員の世話をすることになった。
22歳で入社してこの土地が2度目の転勤。
前の支社でもこの年齢にしたら仕事のできる
素直で穏やかな男という評判だった。
俺にとっては別にどうでもいいことで、
今よりは仕事がしやすくなる程度だろう…
そう思っていた。
それよりも、転勤がなかったということは、
これでもう1年はこの関係を続けることができる…
その喜びの方がはるかに上回っていた。
だからつい…
油断していたのかもしれない。
聡美がいつまでもおとなしく、何もしないままにただ指を咥えて、
白い封筒に金を入れて送ってくるような女であるわけがないことにまで…
考えが及ばなかった。
温かくなり、花が芽吹いて、何もかもが色づく季節。
でも母親が俺を置き去りにして捨てた春…
カノジョが突然いなくなった春…
あの妻(おんな)と永遠の愛を誓ったのも…
この春だ。
俺にとって春は…
どこまでいっても忌々しい記憶しか残らないモノだった。
この4月、今年こそ転勤になるかと冬から怯えてびくびくしていたが…
運よく内示もなく、彼女のいる支社に残ることができた。
うちの課には30歳の男子社員が転勤してきた。
今までの慣例で、彼女がその社員の世話をすることになった。
22歳で入社してこの土地が2度目の転勤。
前の支社でもこの年齢にしたら仕事のできる
素直で穏やかな男という評判だった。
俺にとっては別にどうでもいいことで、
今よりは仕事がしやすくなる程度だろう…
そう思っていた。
それよりも、転勤がなかったということは、
これでもう1年はこの関係を続けることができる…
その喜びの方がはるかに上回っていた。
だからつい…
油断していたのかもしれない。
聡美がいつまでもおとなしく、何もしないままにただ指を咥えて、
白い封筒に金を入れて送ってくるような女であるわけがないことにまで…
考えが及ばなかった。