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そのキスの代償は……
第15章 エピローグ
「あなたは…」

それ以上言葉に詰まったのか…

視線を逸らして何かを堪えるように、しばらく何も言わなかった。

俺は震える彼女に触れることもできないまま、黙って言葉を待つ。

「本当に…

どこまでバカなの?」


「そうだな…」

指を絡め、掌を胸の前で組みながら息を吐く。

「俺たち。ありがとうって言い合いながら別れるなんて…

らしくないよな」


俺が無理に口角を上げ微笑むと、

ひなは哀しい顔をし、瞳を潤ませながら微笑み返してくれた。

始まりはあんなにセンセーションで刺激的だったが…

所詮終わりなんてこんなモノ。


俺は結局、彼女の気持ちと正面から向かい合わないまま…

約束通り転勤を都合のいい理由にして…

逃げるようにいなくなる。

それは…

仕方がない。


ひなとの関係は…

その方がいい。

それ以上深入りしてしまうと…

俺は…

おそらく俺は…

彼女の何もかも全てを独占したくなって…

身も心も壊してしまう。


ただ、寂しさを紛らわす…

契約した欲望をぶつけ合うだけの関係。

それでも彼女の躰に俺とつながっていた傷跡を

刻み込むことくらいはできたはずだから…


お互いに欲しいものを得ていた時間が終わりに向かっていた。
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