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そのキスの代償は……
第15章 エピローグ
黒いマジックで大きく殴り書かれていたその衝撃的な言葉に…

私は目を背け息をのんだ。

そのままどうやって息を吐いたらいいのかわからなくなるほど動揺して…

周りの空気が凍ったような気がした。

そう、心当たりは…

一人しかいない。


脳裏に、真っ赤な口元を歪めてこちらに向かってほくそ笑む

女の顔が浮かんだ。

確か、彼女は…

会社役員の令嬢。

だからっていい年の大人の女が、こんな子供だましのようなことを

するのだろうか?

どうして会社が、こんな個人的な中傷の私信を

給与明細に入れることを許したのだろうか?


そこまでは百歩譲って、私が目をつぶりさえしたら

なかったことにできても…

今まではあったはずの昇給が、今年はない。

その事実は許せなかった。


契約したら…

と言ったはずなのにどうしてこんなことになるのだろうか?

やはりそんな都合のいい約束は、最初から存在しなかったのだろう。


もう完全に終わったはずの、

あの頃感じていた苦い思いが込み上げてきた。

そんなこと…

どうして?


それと同時に、ズキッと下腹部に鈍い痛みを感じた。

まずい…

どうしよう…

私はしばらく運転席をリクライニングで倒して、横になり目を閉じた。
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