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そのキスの代償は……
第15章 エピローグ
あの頃の思い出が走馬灯のように浮かんでは消える。

昔の亡霊に取りつかれながら

どうして…

どうして!

どうして?

心の中で訳もわからず叫び、溢れそうな涙を堪えた。


刃物を振り上げる目つきの鋭いあの人…

私は身構えるように目を強く閉じ、ギュッと両掌を握った。

今度はそれと入れ替わりに、泊まった翌朝の

穏やかな寝顔のあの人もよぎった。

追い出されて私の家から足早に立ち去るときの、

切ない瞳をしたあの人も…


もう終わりにするんでしょ?

どうして私の前から消えてくれないの?

どうしていい思い出だけが浮かばないの?

どうしてあの人をひと時でも愛してしまったの?


しばらくそうやって深呼吸をしながら静かに体を横たえていると、

下腹部の痛みは次第に引いていき…

消えてくれた。

よかった…

ほっと息を吐いて、私は背もたれを起こし、

エンジンをかけて車を走らせる。


今日もやることはたくさんある。

いつまでもこんなところでとどまっているわけにはいかない。

私自身も…

私の気持ちも…

私の心も…


決して誰にも見せることのできない過去の汚点。

忘れられない記憶。

もちろん代償がそんなもので終わるはずはなく…

あの人の影は…

その後も完全に消え去ることはなかった。


【Fin】
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