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そのキスの代償は……
第3章 その情事
どのくらい時間が経ったのだろう…

閉じた瞼を持ち上げようとするが、重すぎて上がらない。

とろんとした目で、ぼんやりと周りの景色が細長く視界に入り始めて…

たぶん意識を取り戻した私は、躰に抑え込むような重みを感じ、

上から右眉を上げてほくそ笑むあの人の裸身が目に飛び込んでくる。

やっとのことで焦点を合わせると、

すぐ近くに寄ってきた瞳に吸い込まれた。


ああ…

何もかも絡み取られる。

どうしてこの人にこんなに囚われるのだろうか?


あの人は瞳も躰もがっちりとらえて離さず、

ほくそ笑んだまま歪んだ唇で覆いかぶさりながら…

首筋の肌に唇を寄せてきた。


「やっと戻ってきたか?でもまだだろ?」

耳元でわざと挑発するような言葉。

心臓がドクンと跳ねて一気に目が覚める。

唇がうなじの敏感な部分に吸い付き、彷徨うかと思いきや

唐突にぺろりとひと舐めされた。

肌にぞわりと知らない感覚が走って、新たな欲望に火をつけられる。


うなじに、肩に、背中に、腹部にと…

小さな火種がゆっくりと躰中に灯されていき、

快感がなぞった先にじわじわと広がっていく。

その唇と舌がくれる快感は、徐々に徐々に下へ下へと降りていった。
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