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そのキスの代償は……
第5章 その心
その日の朝、なんとか気持ちを落ち着け仕事に臨んだ。

そうしなければ…

それが続けていけないなら…

関係を続けることもできなくなるから。


でも、あの夜以来立ってしまったさざ波は小さくなることはあっても…

消えてなくなることはなかった。


時に押し寄せる大きな波を、何度となく誤魔化し…

乗り越えるしかなかった。

それは、あの人と同じ職場で働く以上、

平日は1日として姿を見ないことも声を聞かないこともないわけだから

仕方がないのかもしれない。


その匂いに、その指の動きに、その仕草に…

それまで眠っていた女の部分の私を刺激されてしまう。


結局はどうやって、他人を…

いや自分自身を騙しきれるかなんだと思う。

そこまでして私は続けたいのだと、それに気が付いた時に知った。


それからも、心の奥底で次をただ切に望みながら

そんな日々を過ごしていたある日。

その日もなんとか5時がきて、いつものように定時に仕事を終え、

車で美奈を学童保育に迎えに行き、家に帰って家事をする。

9時を過ぎれば子ども達は自分の部屋に戻って2段ベッドで眠る。

ここまでの4時間はバタバタするのだけれど…

それでもこれを終えれば、ここからは私一人の時間。

お風呂に入ってから、いつものように寝室に引きこもった。
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