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せめて夢の中だけでも
第10章 真っ黒な空
さっきまで晴れていた空には
いつの間にか雲が覆い尽くしていた。
「…降りそうだな…」
そう隼人が呟いた。
しばらくするとポツ…ポツと
雨が降り出した。
「雨…」
『雨男だよ。』
…秋雨…
強くなる雨に私は天を見上げ
彼の事を思い出した。
駅に次々と雨宿りをする人たちが入ってくる。
私たちもその中の一人。
「もー。最悪ー。」
隣の女子高生が、友達同士でそんな会話をする。
「見て!あの人、かっこよくない?」
「本当だっ!モデルさんみたい!」
よくある話…それくらいにしか思ってなかった。
隣を見ればすぐそこに…
秋雨がいた。
四人とも…きっと時間が止まっていたんだと思う。
誰も動かず、誰も口を開かなかった。