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せめて夢の中だけでも
第14章 不思議な男

「…つけた?」


「何を?」


「…キスマーク…」



「へぇ。これキスマークって言うんだ。」



秋雨は私の首筋の赤い印を指でなぞる。
私の体が、小さくピクッと反応する。





「隼人君に見せといてね」




そう言って私から離れると
何事もなかったかのように椅子に座りなおした。

カタカタっとキーボードの音が響く。





…女たらしっ…慣れすぎよっ!




私は席を立つと洗面所へと向かった。





鏡を見ると…やっぱり
小さめではあるが赤い印が咲いていた。




「…はぁ。明日仕事なんだけど…」






諦めて洗面所から出ると

秋雨は、カウンターに突っ伏し眠っていた。





「…疲れてるのかもね…」



彼の横に座りなおし、
その寝顔を見つめた。




この寝顔は…初めて会ったときに見た。




私はおもむろに彼の髪を触った。
ワックスで固めていても、柔らかいその髪は
女性のようだった。
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