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せめて夢の中だけでも
第14章 不思議な男
「…凛ちゃん。明日仕事でしょ?
もう3時だよ。帰ろうか。」


「…うん。」




お互いに立ち上がり
秋雨は私の手を握る。




「…凛ちゃん。また明日ね」




秋雨はやっぱり笑うと
私の頬にキスをした。



…明日があるということだけで安心する。





「…終電ないね。送ってく。」



彼はお店の裏のビルへと歩き出し
車を取りに行った。




しばらく待つと黒いセダンの車が
私の前で止まる。



「…乗って」



誰もが知ってる高級車。



「お邪魔します。」



助手席に乗ると皮のフワフワとした椅子が
とても心地良かった。




…ここに何人の女の子が乗ったんだろう…




考えるのはそういう事ばかり。

…やっぱり捻くれてる



「…乗せたことなんてないよ。」


「えっ!私…声で出てた…?」


「うん…聞こえたけど。」


「…ごめんなさい…」




恥ずかしい…。



「そう思うのは…当たり前だと思うよ。」


少し低い彼の声だった…。
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