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せめて夢の中だけでも
第4章 『秋』の『雨』
「ごめんね。適当に座ってていいよ。」
私は広いリビングのソファーの端に
申し訳なさそうに座った。
なんだか…とても落ち着かない。
彼がティーカップを持って
私の隣へと座る。
「はい。紅茶。飲める?」
「大丈夫です。ありがとう…。」
「今日はちゃんと覚えて帰ってね」
と悪戯っぽく笑った。
温かい紅茶は酔いが冷めた体の喉には
この上ないほど優しかった。
「あの…五十嵐…さん。」
「あっ。名前覚えてくれた?」
「…下の名前は何ですか?」
「あぁ。教えてなかったね。」
彼は立ち上がりテレビ台の引き出しから
油性ペンを一本持ってきた。
「…手…出して?」
言われるがまま右手の手のひらを彼に向けると
彼はその手のひらに何かを書き出した。