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せめて夢の中だけでも
第31章 溢れる心と溢れた優しさ
ピーンポーン…
私はいつもの事なのに驚いて
玄関の方へ視線を向ける。
玄関へ向かう足取りが今日は重く感じた。
扉を開けると…笑顔でそこに立っている煌。
「今日は早く上がれた」
笑顔を向けて私に軽く抱きつく。
「寒かったぁー!」
もう3月でも…夜はまだ冷える。
「凛ちゃん。おいで」
いつものように両手を広げる彼を…
今日は受け止めることが出来なかった。
「煌君…秋雨が帰ってくる。」
立ったまま私は伝えた。
煌の手が力なく下へ下がっていった。
顔は少し笑ったままで私を真っ直ぐ見ている。
「そっか…知ってたんだ。
もう…俺の役目も終わりだね。」
「役目だなんて…私は変わりなんて思ってない。」
「…だったら何で…
そんなに悲しそうなの?
戸惑ってるんでしょう。秋兄が帰ってきたら
俺とは一緒にいたくないから!」
「あっ…」
惹かれてたはずなのに…
秋雨の声を聞いただけで気持ちは秋雨を激しく求めていた…