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せめて夢の中だけでも
第33章 朱里という女性。

「ん…秋雨?」



俺が煌と電話を終えると
朱里が起きてきた。




「起きたの?」


「今何時?」


「三時だよ?」


「寝ようよ…明日も仕事よ?」



「夜だから大丈夫。眠れないんだ。」




ベランダに手をかけると、
後ろから朱里が抱きついてくる。


「なら…抱いてよ。」



その手をそっと離すと
俺は朱里に笑いかけた。


「朱里は、もう…そんな対象じゃない。」




朱里の大きな瞳は少し細くなり
口の端を持ち上げ笑った。



「昔はあんなに夢中だったのに。
あの女に出し抜かれたわね。」


「冗談。夢中になんてなったことない。」



朱里はふんっと笑うと俺の横に来た。
同じようにベランダに手をつき
外の景色を見ている。




「付いてきて…ゴメンね。」


「いや…」


「ごめんね、秋雨」





…朱里は自分が悪いことをわかっている。

けれど一人になるのが怖い…弱い女。
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