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せめて夢の中だけでも
第36章 埋めて、埋めて、埋め尽くして。
お店が開店すると
徐々にお客さんも増えていき
煌びやかな女性が秋雨に色目を使っている。
何度と…見た景色だった。
手の届かない人に思えた事もあった。
でも…今は凄く近くに感じる。
左手の薬指に光る指輪をそっと撫でながら
自分にそう言い聞かせていた。
朱里さんはいつの間にか忙しくなった店の中へと、入って行ってしまったようだ。
姿が見えなくなっていた。
1人になってしまって…
私はユックリと席を立った。
その腕を誰かがキツく掴む。
驚いて後ろを振り返ると、
そこには…秋雨が立っていた。
どこかにお酒を運んでいったのだろう。
左手には銀のお盆を握っていた。
「…どこ行くの…?」
入り口付近のカウンターといえど…
秋雨に引き止められてる女なんて
そこら中にはいない。
周りの視線が私と秋雨に集まっていた。
ただ私はその握られた手を凝視する他なかった。