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せめて夢の中だけでも
第5章 静止の手。
お店に着くと、今日もこの前のマスターが
カウンターに立っていた。


辺りを見回して店員さんを見るが…
秋雨らしき人はいない。




この前と同じ席に座り
沙織ちゃんは、カクテル。
私はビールを注文した。



「五十嵐さんいないですね〜…」


沙織ちゃんも一緒のようで
辺りをキョロキョロ見回している。



「いらっしゃいませ」



秋雨ではなく来たのは
30代前半くらいだろうか…

あご髭を蓄え黒髪を後ろで束ねている

秋雨とまではいかないが…この人も
かっこいい…



「今、秋(あき)は出かけてるから。
ゆっくりしてて」


その人は私を見てウィンクをした。



あき…との呼び名で私はその人が
秋雨だとすぐに解った。



「秋?誰ですか?先輩?」


沙織ちゃんは身を乗り出して聞いてくる。


「あっ、ちょっと知り合い…」


そう誤魔化すと

「その人もカッコいいですか!?♡」と
沙織ちゃんは目を輝かせていた。
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