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せめて夢の中だけでも
第38章 知らないあなたも私は知りたい。



「なぁーんてね」

さっきの声とは裏腹に無邪気な笑顔の壱。


…何だったの…



「俺も秋雨さんのことそんなに知らないから」
そう笑った。



…あれ…この子…何で…

不意に浮かんだ違和感。






すると壱の肩に手が置かれた。

「おい。花子。」

秋雨だ。

「あっ!秋さん!」






…コレだ…この子…秋雨の名前を知っている。





このお店では秋雨は何故か本名を教えていない。
みんなが口を揃えて『秋』と呼ぶ。


私の前でだけこの壱は
「秋雨さん」と呼んだ。





「ねぇ、君一人で来たの?」

秋のわざとらしい声が私へ向けられる。

「へっ?あっ…うん。」

「そうなんだ…君、可愛いね。
食べちゃいたいくらい。」

「ちょっ…と…」



「顔真っ赤だよ?熱でもある?
それのも何?


俺に惚れた…?」



秋雨は微笑んで私から目を離さない。
顔がドンドン熱くなっていくのがわかる。
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