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せめて夢の中だけでも
第38章 知らないあなたも私は知りたい。
……知らないこと?
ふと私は基本的なことを思い出した。
「秋雨…知らないことあった。」
「そう?何?」
秋雨が、私から離れ上体だけ起こしている。
そのまま、私は秋雨に、背中を向けたまま続けた。
「秋雨の…家族のこと…知らない。」
そう。秋雨は何一つ家族のことは話さない。
必ずいるであろう両親の話も…
もしかしたらいるのかもしれない兄弟の話も。
この1年、それは触れてはいけないものなのだと思っていた。
でもていつまでも聞かないわけにはいかない…。
「そうだね。」
秋雨は少しの間を開け小さく答えた。
「後、どうやって仁さんに出会ったのか。」
これもそう。
仁さんからチラッと聞いただけで…。
「はぁ。」
後ろから溜息が溢れる。
ビクッとからを揺らしてしまった私を
秋雨は気付いていたのか
後ろから優しく髪を撫でた。