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せめて夢の中だけでも
第5章 静止の手。
その時、沙織ちゃんの携帯電話が鳴った。



「あっ!ヤバッ!彼だ!」


先輩〜すいません…
ちょっと電話してきます。」


私はハイハイと返事をすると
沙織ちゃんは携帯電話を耳に当て
軽く頭を下げると外へと出て行った。



沙織ちゃんと彼は付き合って3ヶ月になる。

沙織ちゃんの猛アタックで付き合ったらしい。



私には沙織ちゃんのように
恋愛を全力で頑張ることなんて…

もうないんだろうな…




奥のテーブル席へ目をやると
女性2人できたお客さんに
笑顔を向ける秋雨の姿。



…彼に恋をすることなんて…


「ないわ…ないのよ。」





「すいませーん!先輩っ」

沙織ちゃんが申し訳なさそうに
席へと戻ってくる。


「そろそろ帰ろうか?彼、待ってるんじゃない?」


「あー…すいません。」


「いいのよ。楽しかったし」




時間はまだ21時前だったけれど

私たちは帰ることにした。



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